婦人科の疾患

子宮筋腫

子宮筋腫は、子宮にできる腫瘍のなかで最も多いものです。すべてが手術の適応ではありませんが、30 代以上の女性の約20 〜30%にみられます。良性の腫瘍ですので、これそのものが命取りになることはありませんし、悪性化することはないといわれています。発生原因は不明ですがその増大には女性ホルモンが関与しています。月経がある間は増大します。しかし閉経後は縮小してきます。ですが大きさや、できる場所によっては様々な問題が起こるため、治療の対象となります。

子宮筋腫の症状

① 子宮出血;過多月経、頻発月経、特に粘膜下筋腫は出血が多い。
② 月経痛
③ 貧血の為→心臓肥大(筋腫心)、頻脈
④ 不妊症、不育症
⑤ 筋腫による圧迫症状、便秘、頻尿、腰痛など

子宮筋腫の発生部位による分類

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子宮筋腫は育っていく場所によりほぼ3つのタイプに分けられます。

① 漿膜下筋腫
子宮の外側に発育し、自覚症状があまりないタイプ
② 筋層内筋腫
筋層内で発育し、月経過多・月経痛がみられる
③ 粘膜下筋腫
子宮の内側に発育し、月経過多になりやすい
腟内に脱出したものを特に筋腫分娩と呼び出血を起こす

子宮筋腫の診断

以下の検査を行います。

① 内診
② 超音波
③ CT
④ MRI

子宮筋腫の治療方法

1)保存的療法;経過観察

2)内科的療法

① 偽閉経療法;注射や点鼻薬で身体を閉経状態にして筋腫の縮小を図る。
② 手術療法:
子宮を摘出する場合は、腹式、膣式いずれの場合にせよ、その基本は「子宮と卵巣の間の靭帯と卵管を切断し、膣上部で子宮と膣を切り離して、子宮のみを摘出する」というものです。膣の断端は、縫合して閉じてしまいますから腹腔内から腸が出てくることはありませんし、手術後も夫婦生活はそれまでと同じように可能です。また、いわゆる女性ホルモンを出す卵巣は異常のない限り残しますので、術後急に更年期のような症状が出ることはありません。

A. 子宮そのものを摘出する方法

1)開腹する方法(腹式子宮全摘術)
筋腫が大きい場合や以前手術をしていて(帝王切開など)腹腔内に癒着があると考えられる場合、卵巣の異常も認められる場合などに行います。

2)開腹しない方法
① 膣式子宮全摘術:筋腫があまり大きくない場合は開腹せずに膣から摘出できます。
② 腹腔鏡下補助膣式子宮全摘術:癒着やその他の異常の有無を確かめたうえで止血操作をしてから子宮を摘出する、より安全な手術です。

B. 子宮筋腫のみを摘出する方法(20〜30%に再発します)

1)開腹する方法:腹式子宮筋腫核出術
筋腫が大きい場合や以前手術をしていて(帝王切開など)腹腔内に癒着があると考えられる場合、多数の筋腫が認められる場合に行います。

2)開腹しない方法:腹腔鏡下子宮筋腫核出術
筋腫があまり大きくなく数が少ない場合は開腹せずに癒着やその他の異常の有無を確かめたうえで行います。小切開を加え子宮の縫合や筋腫の回収を行います。

C.子宮腟上部切断術:一番子宮癌の発生しやすい部位を残すため、子宮癌検診は受ける必要があります。
D.子宮内膜アブレーション(MEA)

MEA は膣から子宮内へ細い管状の器具を入れ、先端からマイクロ波を照射して加熱し、壊死させる過多月経の新しい治療法です。
2012 年4 月より健康保険適応となっています。月経時の出血は、子宮内膜が自然に剥がれ落ちておきますので、子宮内膜をマイクロ波により壊死させてしまうと、子宮内膜からの出血は減少し、過多月経は改善されます。
入院が短期間(1 日入院)で日常生活への復帰が早いことが特徴です。

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アブレーション後の子宮内膜の変化

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子宮内膜症

推定受療患者は12万、推定患者数は200万人。月経痛を訴える20代女性の50%は子宮内膜症といわれる。
基本的には子宮内膜様組織が子宮内腔(子宮内膜層)以外の場所で増殖する疾患。
自覚症状は、月経痛、腰部痛、性交痛、排便痛を伴い、これらの患者はしばしば不妊を訴えていることが多い。
不妊患者の約25%は内膜症と言われる。

チョコレート嚢胞

卵巣子宮内膜症で子宮内膜が異所性に増殖して血液を貯溜。
子宮内膜症の一つのタイプです。
卵巣嚢腫の中に、古い血液様の液体がたまっています。

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子宮内膜症の症状
① 痛み;月経痛、腰痛、排便痛、性交痛
② 不妊症
③ 大きくなれば腹部膨満感、頻尿などの症状がある

子宮内膜症の診断

以下の検査を行います。
① 内診
② 超音波
③ CT
④ MRI
⑤ 卵巣腫瘍マーカー:CA-125など

子宮内膜症の治療

1)保存的療法;経過観察、鎮痛剤投与など
2)内科的療法:ホルモン剤投与
(ア) ピル
(イ) ルナベル
(ウ) ディナゲスト
(エ) GnRhアゴニスト(リュープリンなど)

子宮内膜症の治療

卵巣嚢腫とは、卵巣が腫れている状態のことをいいます。卵巣嚢腫といっても、その内容は様々です。卵巣には卵があり、卵からは様々な組織が出てくるのですから、こういうことが起こるのです。
結果によっては、追加治療が必要となってくることがあります。卵巣嚢腫の種類は大変多いので、ここでは比較的よくあるタイプの卵巣嚢腫についてのべます。

卵巣嚢腫

卵巣嚢腫とは、卵巣が腫れている状態のことをいいます。卵巣嚢腫といっても、その内容は様々です。卵巣には卵があり、卵からは様々な組織が出てくるのですから、こういうことが起こるのです。
結果によっては、追加治療が必要となってくることがあります。卵巣嚢腫の種類は大変多いので、ここでは比較的よくあるタイプの卵巣嚢腫についてのべます。

卵巣嚢腫の症状

・多くは無症状
・大きくなれば腹部膨満感、頻尿などの症状がある
・下腹部痛:破裂や捻転等を起こせば下腹部痛を起こす。
・直径が4 〜 5cmで周りと癒着のないものは、時にくるりと回転して支えている靭帯や血管がねじれ、激痛を起こすことがあります。
これを卵巣嚢腫の茎捻転といい、緊急手術の適応となることがあります

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卵巣嚢腫の診断

以下の検査を行います。
① 内診
② 超音波
③ CT
④ MRI
⑤ 卵巣腫瘍マーカー

卵巣嚢腫の分類

 1)漿液性嚢胞腺腫
嚢胞の内溶液が黄色透明の漿液性である。
全卵巣腫蕩の約20%、嚢胞性良性群の約25%を占める。
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 2)粘液性嚢胞腺腫
嚢胞の内容は粘液性である。
全卵巣腫蕩の15%、嚢胞性良性群の約20%である。
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3)成熟嚢胞性奇形腫
嚢胞性卵巣腫癖のうちで最も多く半数以上を占める。
全卵巣腫蕩の約40%を占める。
続発性に悪性化する事が1〜2%にみられる
嚢腫内容は毛髪、汗腺、皮脂腺、歯牙、軟骨、骨などがみられる。
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4)その他

チョコレート嚢胞

卵巣子宮内膜症で子宮内膜が異所性に増殖して血液を貯溜。
子宮内膜症の一つのタイプです。
卵巣嚢腫の中に、古い血液様の液体がたまっています。

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卵巣嚢腫の治療

1)保存的療法;経過観察
2)手術療法(原則として腹腔鏡下を行います。悪性卵巣腫瘍が疑われる場合、巨大卵巣腫瘍、癒着が疑われる場合など開腹手術が行われます。また手術後の病理診断により追加手術が必要になります)
卵巣嚢腫の手術では、原則として卵巣の腫れている部分のみを摘出します。(子宮の病気があれば、同時に上記の手術をすることがあります。)
癒着があるときや、くわしい検査が必要と判断した場合には卵巣そのものを摘出することがあります。この場合でも、片側の卵巣は残りますので、術後急に更年期のような症状が出ることはありません。やむを得ず両側の卵巣を摘出したときは術後ホルモン補充療法を行うと、更年期症状の発現を防げます。
① 卵巣嚢腫切除術
② 卵巣摘出術
③ 附属器摘出術

子宮脱・子宮下垂(骨盤臓器脱)

年齢が進んで筋力が落ちてくると、子宮を支えている膣の壁などの組織がゆるくなって子宮が下がってくることがあります。医学的には、これを子宮下垂といいます。子宮下垂が進めば、子宮脱がおきます。ひどい場合は、子宮が全部膣の外に出てしまうこともあります。また、膣上壁の筋肉のゆるみで膀胱が膣の方へ飛び出してくる膀胱下垂(膀胱瘤)、膣下壁部分の筋肉のゆるみで直腸が出てくる直腸脱(小腸瘤)になることがあります。いずれも程度がひどくなると手術が必要です。手術は、多くは開腹することなく膣式に行えます。

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骨盤臓器脱の原因

・子宮支持組織の弛緩
・分娩時損傷、産褥の不摂生、体質、高年令、重作業などにより子宮支持組織の弛緩が生じる

骨盤臓器脱の症状

・下腹部、外陰部の不快感、圧迫感、腰痛
・排便・排尿障害(尿頻数、便秘)
・帯下増加、性器出血

骨盤臓器脱の分類

子宮下垂;子宮が膣内に下降するが子宮睦部はなお膣入口部以上にある
子宮脱;子宮の一部が膣入口を越えて下降する。
膀胱下垂(膀胱瘤)
直腸脱(小腸瘤)

骨盤臓器脱の治療法

1)保存的療法
2)ペッサリー:腟内に脱防止リングを挿入。毎月洗浄、3ヶ月毎に入れ替えが必要。サイズが合わなければ自然に脱出したり痛みで抜去しなければなりません。
3)手術療法:種々の手術療法がありますがいまだ完成された術式はありません。再発や尿症状の問題が残ります。患者さんの状態に応じて手術法を検討します。
・前腟壁形成術、後腟壁形術、肛門挙筋縫縮術
・マンチェスター手術
・膣式単純性子宮全摘術
・腟閉鎖術
・メッシュ手術
・膣断端仙骨前面固定術